これから学習塾を開業して経営を始めたいと思っている人は、これから開業する上でどのような問題や課題にぶつかるか不安だと思います。
学習塾ってどうやって始めるんだろう
学習塾を始めるのにどれくらいの費用が必要なんだろう
その他に経営の中でどんな問題が出てくるんだろう
そのような悩みを抱えている人に向け、
今回は私の経験を踏まえたうえで、学習塾を開業して経営していくうえでよくある悩みを解決するお手伝いができればと思います。
私はゼロから1人で個人塾を開業して、地域で順調に知名度を高めていくことができました。おかげで現在はこの地域で私の教室は多く皆さんに認知されるようになりました。
開業当初「3年続けることが難しい」と言われたのを鮮明に覚えています。それには塾を開業して上手くいかなかった先人たちの経験があるのでしょう。
事業開始直前・直後と経営が軌道に乗って安定してからではそれぞれのステージで異なる課題に何度もぶつかりましたが、事前に対策を考えておくことで簡単に乗り越えられそうなものです。
この記事では、これから学習塾の経営を考えている方が最初の一歩を踏み出すことができるよう、私が学習塾の経営をする中で悩んだこと、直面した問題点、またそれをどのように解決していったかを紹介していきます。
なお、今回は自身でゼロから教室を立ち上げる場合について書いていきますので、フランチャイズの教室の開校を検討している方はこの通りではないかもしれませんがご了承ください。
これを参考に事前に対策を考え、準備万端で学習塾経営に挑んでください!
1.学習塾を経営するうえで意識しておくこと
まずは漠然とでも良いので次の2つのことを決めておきましょう。
次に、成功したときの自分の塾をイメージしてみてください。
他の塾にはない特徴や強みも持っていた方が良いです。
これは少し難しいかもしれませんが、ホームページやチラシを作るときに、何を掲げて宣伝するかをイメージしてみると良いでしょう。もしかしたら経営をしていく中で自分の塾の武器が見つかっていくこともあるかもしれませんが、最初から強みがあった方が今後も方針がブレずに続けていけます。
私の教室は『理数専門』でることと、様々な授業方法から自分に合うスタイルを選択してカスタマイズできることが特徴であり、強みでもあります。
2.屋号はどのように決めるべきか
開校当初、私は『〇〇塾』という名前を避けたくて屋号には少し苦労をしました。
最終的に好きなアーティストの好きな楽曲にフィーチャーして屋号をつけました。
時間をかけて悩んだ結果、自分の好きなものを参考にしてつけたネーミングなので、自分ではとても気に入っていますし、今は地域にも馴染みのある教室になりましたが、初めは悩みもありました。
(ⅰ)分かりやすい教室名
学習塾であることが分かりやすい屋号が良いです。
特に開校直後、そこに新たに開いた会社がすぐに塾屋さんであると認知してもらうためには『〇〇塾』などが定番でしょうか。
しかし、それ以上にこだわりたい名前があるのであれば、納得できるネーミングを付けてください。経営を続けていく以上、ずっと付き合っていく屋号ですので慎重に決めましょう。
実績を積み重ねていけば、どんな屋号であろうと、そこが学習塾であることは少しずつ地域に浸透していくものなので安心してください。
私の教室はと言うと、最初に考えた屋号『〇〇〇〇』だけだと「何をしている会社か分かりにくい」という問題を感じましたので、屋号を『学習塾〇〇〇〇』として決定しました。
さすがに『学習塾』とつければ間違いなくそこは学習塾です。
(ⅱ)発音しやすい教室名
親しみやすい、覚えやすい、呼びやすい屋号であることも大切です。
「あそこのー、あのー、なんだっけ、あの塾の名前・・・」
複雑な名前では少し覚えてもらいにくい可能性があります。
「あそこの〇〇塾、とても評判良いらしいよ!」
このように教室名を覚えてもらった方が宣伝力も上がるものです。
ぜひ親しみやすく覚えやすい屋号を意識してみてください。
ご挨拶をするたび、電話を取るたびに名乗ることになる教室名ですので、発音しやすい屋号にすることも大切ですね。
私の教室名は少し発音しにくく、電話を取って教室名を名乗るのに呂律が回らず苦戦していました。自分の教室名がスラスラ言えないとは何とも恥ずかしい…。
3.初期費用はどれくらい必要か
極論ですが、塾というのは、本当に最低限であれば①勉強をする机と、②それを置くスペースさえあれば始められます。
どのような授業をしたいかにより必要となる教室の広さも異なりますが、生徒とマンツーマンの形式や、個別授業の形式であればそれほど大きなスペースは必要ありません。
教室を構えれば家賃もかかりますが、生徒が少ない最初は自宅の1室を教室として使うという選択もアリだと思います。ただし、家族の協力が必要だったり、宣伝の際には自宅住所など個人情報を掲載しなければならないというリスクもあります。
集団授業の形式を考えているのであれば、いずれは黒板やホワイトボードも必要になりますので、最初からそれが可能な規模の教室を構えるべきです。
いざ生徒が増えてきてから教室を探して契約を交わして…となると手遅れになってしまいます。
私の場合について話します。
家賃10万円×2か月分に敷金と礼金、電光の外看板と通り沿いの大看板設置、電気や電話の工事や、必要な椅子などの購入、最初からコピー機のリースを組み、必要な教材を買いそろえても初期投資は150万円くらいでした。
幸運だったことに、事務机2台、教室用長机6台、ホワイトボード2台は譲ってもらうことができ、PCも以前から使っていたノートパソコンをそのまま使いました。これらを新品で購入したとすると、安めのものでそろえても15万円くらいはかかるでしょうか。
自宅教室で始め、机や椅子もすでにあるものを使えば0円から始められます。
私のように教室を構えて必要なものをゼロからそろえても200万円あれば開業には十分です。
塾は他の業種と比べて資金面では圧倒的に小さな負担で始められると言えるでしょう。
4.受講料はどのように決めるのか
受講料を決定する前に、地域の学習塾の受講料の相場は把握しておきましょう。
相場の料金をベースに、今後の方針を考えながら決定しましょう。
ただし、「開校時で生徒を集めたいから」という理由で安すぎる設定にするのは絶対にNGです。
(ⅰ)相場の受講料を知っておく
授業の形態が集団授業か個別授業か、ターゲットにする生徒が小学生か中学生か高校生か、これによって受講料の相場が異なります。
自分がイメージする学習塾に近い塾の料金を調べてみてください。
相場と比べて安すぎても高すぎても集客は上手くいきません。
どういうこと?
通常1,000円くらいのドッグフードが10,000円で売っていたら買いますか?
もちろん買うわけない。他のお店に買いに行くよ!
では逆に通常1,000円くらいのドッグフードが100円で売っていたら買いますか?
安い…。だけど賞味期限切れじゃないかとか疑って買わないかもしれない。
塾の受講料も似たようなものです。
ただし、実際授業というのは形のないものですし、授業の方法や授業の質は教室によって異なるので、教室によって受講料が違うのは当然なのですが、やはりお客さんの中には塾選びの際に料金から入ってしまう人も少なくないことは理解しておく必要があります。
私は前職の塾での授業料と、教室の目の前が「公〇いくもん♪」で有名な『公〇』さんだったこともあって、それらを参考にして授業料を設定しました。
地域の塾の中では安価な部類になり「その料金でしっかり教えてもらえるんですか」と問い合わせをいただく機会も度々ありました。
今でこそ地域にはワンコイン授業なんてやっている教室もありますが、しっかりした料金設定をして、それに見合った授業を提供できることが大切です。
(ⅱ)長い目で先を見て決定する
数年後の教室運営をイメージしてみてください。
ずっと塾長ひとりで指導していくのか、他の講師を雇うのか。
教室の規模を拡大する予定があるのか、開校時の教室のまま続けていくのか。
正社員であれアルバイトであれ、他の先生を採用する予定があるのであれば、給料を支払っても利益が出る料金設定にしておかなくてはなりません。
教室を拡大するのであれば、その規模に応じて家賃や光熱費も膨らみますので、それを支払い続けられる料金設定にしなくてはなりません。
私の教室を例にすると、
家賃+光熱費+諸経費で月々の出費がザックリ30万円程度です。
以下、月々の経費を30万円、お預かりしている生徒を50人として受講料を考えてみましょう。
(1)経費のみを払っていく場合
30万円÷50人=6,000円
1人当たり6,000円のお月謝をいただけば経費は支払っていけます。
(2)自身の給与20万円の利益を見込む場合
(30万円+20万円)÷50人=10,000円
1人当たり10,000円のお月謝をいただけばさらに自身に20万円の所得が得られます。
開講当初から毎月これだけの出費は出ないと思いますが、先生を雇えば人件費もかかります。
毎月の出費を生徒が何人集まった時点でペイできるようにしたいか考えてみると良いでしょう。
(ⅲ)安すぎる料金設定はNG
受講料は途中で上げにくいという理由から、安すぎる設定はNGです。
経営をしていく中で、今年度は出費がかさむから受講料を上げる、生徒が少ないから受講料を上げる、なんてことはもちろんできません。
しかし、生徒の人数は年度によって異なり、確実に安定させられるものでもありません。何らかの理由によって生徒の数が減少しても経営を維持し、収益を出さなくてはならないのです。
私の教室はコロナウイルスによる影響を大きく受けました。
既存の生徒の流出はありませんでしたが、新規の生徒の入塾が激減しました。
「事業を開始する時点でどれくらいの生徒に集まってもらえるか自信がない」という方も多いのではないかと思いますが、授業料を設定してからそれに見合う授業を提供できるように自身が努力することが大切です。
開校時、生徒を募集するために料金を安めに設定したくなる気持ちは分かりますが、それであれば通常料金をきちんと設定したうえで、それとは別に『開校キャンペーン』などを実施するのはどうでしょうか。
また、受講料の安さを一番の売りにしているようでは今後が思いやられます。
大切なのは多少料金が高くても受講料に見合った授業を提供できることと、そのための努力をし続けられることです。
受講料の設定は、今後の努力に対する自身の決意とも取れるでしょう。
5.開校直後、生徒はどのように集めるか
経営を始めてすぐ、
口コミもない状態でどうやって生徒を集めるんだ!?
生徒獲得は、個人事業主として塾を開業する際、最も不安に感じる部分でしょう。
初期の生徒募集に関していくつかの方法を提案していきます。
開校後、最初の生徒の募集には、チラシを撒く、知人を通して紹介してもらうなどのアクションが考えられます。
また、自宅とは別の教室を構える予定の先生は、塾を開業すると決めたときから生徒募集のための宣伝を少しずつ始めるのが良いと思います。
しかし、それらも上手くいくとは限りません。最初は、生徒がゼロの状態で始め、一定期間は収入がない覚悟で始めるくらいがちょうどいいのかもしれません。
(ⅰ)直接チラシを撒く
学校の前や、人が集まりそうな場所で学生に直接配布する方法が考えられます。
塾通いに興味がある学生や保護者にチラシを渡すことで、その場で質問を受けることもできますし、自身を売り込むこともできるなどのメリットがあります。
デメリットは、交通や近隣の迷惑になる可能性があること、配布したチラシをその辺に捨てられる可能性があることなどです。
捨てられたチラシはもちろん後で回収することが鉄則ですが、頑張って作成したチラシであればそれが捨てられるというのは何とも心が痛むものです…。
また、交通の妨げになって通報されたなんて話も耳にしますので注意してください。
(ⅱ)ポスティングによってチラシを撒く
業者に依頼することも考えられますが、資金を節約するのであれば、自分の足で直接ポスティングに回ることも考えなくてはなりません。
しかし、ポスティングした先の家庭に学生がいるかどうかも分からない状態で配布しますので、労力の割には集客につながらない覚悟が必要です。
新聞を取っている家庭も減少している中、紙媒体によるポスティングは優先度が低いのかもしれません。
私の教室では今でも年に数回ポスティングによるチラシ配布をしていますが、5,000部配布して2~3件の問い合わせがあれば上出来といったところでしょうか。つまり反応があるのは配布枚数の0.1%にも満たない数ということになります。
(ⅲ)【オススメ】開校前から授業を始める
塾を始めると決めたときから授業を始めるのはおススメです。
自宅教室の場合はすぐに始められるので当然のことですが、自宅とは別に教室を構える場合も家庭教師や自宅教室を一時的に用意して授業をしてみましょう。
その際に「〇月から塾をやるから興味があったら通ってください」と宣伝をするのです。
最初に声をかけるのは地域の学生や、知り合いの子供などが良いでしょう。
家庭教師や自宅教室となるとお互いにある程度信用のある関係でないと成立が難しいです。
ここでは授業をして収入を得るというよりも、自身のスキルアップと、教室開校時の最初の生徒獲得ることが目的となります。
開校時、生徒が1人もいないのと、1人だけでもいるのは全然違う!
学生と接点があるだけで、学校の情報が少なからず入ってきたり、保護者と接点ができれば口コミで紹介をもらえたり、受講料をいただかなくても授業をするメリットが盛りだくさんです。
ここでご縁があった生徒さんが塾を開校した際にそのまま通ってくれれば、最初から「生徒がいない!」という状況は防げます。
生徒が一人でもいればその一人をとにかく大切にすること、既存の生徒を大切にすることが地域への評判の拡大と新規の生徒獲得に繋がることは言うまでもありません。
このようにして“最初の塾生”を獲得する方法はおススメです!
6.塾の経営に必要なものは何か
開校時に最低限必要なものは前述の通り、机と椅子です。
集団授業であれば黒板やホワイトボードも必要でしょう。
机と椅子以外に、あれば便利なもの、すぐに必要になるものなどを教えて。
ではその他に必要なものを見ていきましょう。
最初からすべて揃えられるに越したことはありませんが、資金と相談しながら少しずつ揃えていくというのも良いでしょう。
(ⅰ)事務作業用の机
塾の仕事というのは授業をするだけではありません。
授業の準備や予習はもちろん、生徒や保護者へのお知らせや月謝明細をつくったり、時間割調整をして日程表をつくったり、会計作業も自分でやらなくてはなりません。
私の場合、授業やそれに必要な準備をするよりも、月謝や日程に関する事務仕事に追われることの方が圧倒的に多いです。
それらの仕事をこなすには、やはり授業とは別に仕事用のデスクを用意しておくべきです。
(ⅱ)教材・本棚
塾は公立の学校とは違う“塾用教材”を購入することができます。
普段の授業で塾用教材を使用することもできますし、生徒の自習や授業の補填のために別の教材を用意しておくとさらに便利です。
私の教室は理数専門の学習塾ですが、授業で扱っていない文系科目の教材も一通り用意してあり、生徒が希望する際には学習に使えるように整えています。
また、授業で塾用教材を使う場合には、新規の生徒が入塾してきたときにすぐに渡せるように在庫も準備しておきたいですね。
それらを保管するのであれば本棚も必ず用意するべきでしょう。
(ⅲ)コピー機
塾の経営をしていくうえでコピー機は不可欠と言って良いでしょう。
コピー機は一般的に6年間のリース契約になります。家賃や光熱費のほかに毎月の出費として計算しておく必要があります。
授業中にテストを行う際、宿題のプリントを生徒に配る際、1枚1枚すべて手書きで作るわけにもいきませんし、毎回コンビニに行ってコピーするわけにもいきません。
ある程度塾の形ができてくると、月謝明細であったり日程表であったり、生徒に配布するものも増えてきます。
私の教室では月平均2,000~3,000枚ほどコピー機で印刷しているようなので、もはやコピー機なしでは仕事になりません。
毎月これだけ使用しているとなるとコピー機の販売店が学習塾とリース契約を結びたがる意味が分かりますね。
(ⅳ)パソコン
まずは開業時点で小さくてもホームページが必要です。
今の時代、塾を探そうとしたらまずはネット検索をするでしょう。そこで検索に引っかからなければお客さんの選択肢に上がってきません。
また、授業で使うプリント、お知らせや月謝明細など、書類はすべてパソコンを使って作成していきます。
生徒の人数が1~2人のうちは何とかなってもそれ以上の人数の生徒さんをお預かりするようになればパソコンは必須と言えるでしょう。
私も授業以外の時間のほとんどの時間はパソコンの前で過ごしています。
開校直後は思ったように授業が入らないこともあるでしょう。パソコン操作の勉強をする時間も十分にあるはずですので、とりあえず優先して用意しましょう。
(ⅴ)生徒が授業に集中できる環境をつくるための設備
それ以外は生徒が必要としそうなものと、環境を整えるために必要なものをそろえてください。
例えば筆記用具を忘れた生徒に貸し出せるための予備の文房具、コンパスや三角定規、辞書もあると良いでしょう。
毎日の掃除に使う掃除用具も必要です。
冷暖房の設備や、ウイルス対策の設備もあった方が生徒が安心して塾に通えます。
お金をかけようと思えばいくらでもかけるところはありますので、予算と相談しながら少しずつ整えていきましょう。
例えば私の教室にはウォーターサーバーがあったり、WifiやPCのサーバー、ダ〇キンも利用しているので、これらは月々の出費として重なってきます。
(ⅵ)まとめと料金紹介
1.2の授業用の机と椅子、ホワイトボードは初期費用に含んだ15万円 ▶初期費用はどれくらい必要か
3の事務用デスクは今の時代1台につき10,000円~で買えるでしょう。
4の塾用教材は1冊1,000円くらいが相場で、まとめて買えば割引してくれたりします。
5のコピー機は月々20,000円×72ヵ月くらいでしょうか。
6のパソコンは10万円程度で考えておきましょう。
7.生徒の要望にどこまで応えるか
想定できる範囲で、生徒の要望にどのように応えるか考えておきましょう。
私の教室は理数専門の塾として開業しましたので、集まる生徒も理数科目の強化を目的として通ってくれる学生がほとんどです。
しかし、しばらく通ってもらうと生徒は着実に理数科目の成績を伸ばすのですが、当然のように「他の科目も習いたい」という要望が出るようになりました。
このような、設定している以外の要望にどう応えるかという問題です。
以上のような要望が出ることは容易に考えられますので、その際の対応方法は事前に考えておくと良いでしょう。
生徒が満足してくれればそれだけ要望は増え、お預かりする生徒が増えれば増えるほどまた要望は増えます。
ただし、何でもかんでも生徒の希望に応えれば良いというわけではありません。
また、1人の要望に応えれば他の生徒の同じ要望にも必ず応えなければなりません。できないものはできないと言うことも必要です。
私は理数専門で塾を経営していますが「英語も習いたい」「文系科目も教えて」という要望があり、生徒が増えるとそのような要望の件数も増えていきました。
専門科目と同レベルの質で授業を提供できる自信がなかったので、授業を正式に組むことはお断りし、授業料なしで簡単なお手伝いやアドバイスだけはすることにしていました。
そしてその後は英語を指導できる先生に勤めてもらうことになります。
このように、考えうる設定外の要望への対処方法は事前に考えておきましょう。
8.講師を雇う際の悩みはどんなことがあるか
経営が順調であればあるほど、自身1人では授業がまわらなくなるときがあります。
そのときには新規生徒をお断りするのも選択肢の1つ、他の先生にお願いするのも1つです。
塾で先生を雇う際に困る問題点を紹介します。
(ⅰ)そもそも応募がない
講師募集と言えば求人サイトや求人情報誌で募集を掲載する方法が主流です。
しかし、地域によっては求人に数万円かけようとも思うように先生は集まりません。
私の教室のある市内・近くの市町村には大学がありません。大学生には人気の塾講師のアルバイトですので、大学生のいない地域では講師の募集に毎回苦労します。
特に大学生講師を積極的に採用したいわけではありませんが、やはり大学が多いエリアの方が講師募集も順調に進むことが多いようです。
(ⅱ)先生の離職率が高い
アルバイト講師であれば時給目当てで軽い気持ちで応募してくるような人もいますので要注意です。
塾講師というのは生徒の人生の一部を預かるとても重要な仕事です。
途中で急に蒸発してしまうような先生に仕事を任せるわけにはいかないのです。
しかし、アルバイト講師の中には軽い気持ちで仕事を始めたものの、やってみて合わなければすぐに辞めてしまう人もいますし、一方的に連絡を絶ち切るような人もいます。
また、大学生のアルバイト講師は大学を卒業するまでの期限付きのお付き合いになることが多いですので、どんなに良い先生と巡り合えたとしても時期が来たら他の先生を補充しなくてはならないことが決まっているのです。
正社員であっても、終業時刻が他の業種よりも遅く、家族と生活リズムが合わせにくいなどの問題もあり、離職率の高い職業と言えるでしょう。
途中で先生が離脱することは、経営においても負担になりますが、何といっても授業を受けてくれていた生徒に迷惑がかかってしまいます。
採用の際にはしっかりと規約等を用意して、先生のやる気を重視して採用面接をするようにしましょう。
(ⅲ)授業をお願いできるタイミング
講師の募集をした際、応募してくれる先生は「すぐに働きたい」という気持ちで応募してくることがほとんどです。
しかし、今教室で請け負っている授業はすべて自身でまかなえているはずです。
既存の生徒の担当を新しい先生に譲りますか?それで生徒が納得してくれるなら良いです。
塾長の授業が他の先生の授業に替われば授業の質は少なからず落ちますよね?いや、落ちるべきです。
では、新しい生徒が入塾するまで先生を待たせますか?それではすぐ働きたい先生は他の塾を探してしまうかもしれません。
このように、採用側と求職側で仕事を成立させるためのタイムラグが生まれます。
私の教室では、指導未経験の先生であれば授業見学に来てもらう、授業ができる先生には無料補講を行ってもらうなどして、スキルアップのための研修期間として授業提供までのタイムラグを役立ててもらうようにしています。
(ⅳ)他の先生に期待しすぎない
講師を募集する際には「こんな先生がいてくれれば良いな」というイメージがあると思います。
しかし、「期待しすぎない」ことが鉄則です。
経営者にとってその塾は『我が城』であるのに対して、雇われる講師にとっては『職場』でしかないのです。
つまり、経営者は常に塾を最善のものにしようという意識でいますが、他の講師にとってはそこまでの気持ちではありません。未来に対する考えには常に温度差があると思っていた方が良いでしょう。
もちろん一生懸命働いて最善を尽くしてくれる先生だってたくさんいますが、そんな先生と巡り合える可能性は低いということを理解しておきましょう。
その他にも、想定外の事例はあるものです。
9.生徒の成績が思うように伸びない
いつもいつも思うように生徒の成績は伸びてくれるわけではありません。塾として永遠の課題です。
学習塾というのは『成績を上げるために通う施設』ですので、生徒はテストの点数を上げること、成績を伸ばすことを目的に入塾してきます。
つまり、成果が出なければ意味がない=学習塾失格なのです。
しかし、全員が必ず思うように成績が上がり、全員が必ず志望校に合格するわけではないのが現実です。
生徒の成績を思うように伸ばせずに反省することは大切ですが、だからと言って先生がいつまでもウジウジしているのも問題です。
「成績を上げる」ではなく「成績を上げるためのお手伝いをする」という意識も大切です。
いくら完璧な授業をしても、生徒が授業を聞かない、言った通りにやらないではさすがに成績を上げるのは不可能です。
生徒に対して『正しい方法で勉強をするように導く』ことが大切であり、成績が伸び悩む生徒に対しては『成績が伸びない理由』を明示できるようにしてください。
まずは先生が『成績が伸びない理由』を丁寧に説明してあげましょう。
必要であればその理由を保護者にも伝え、次回までにどのような対策が必要か教示してください。
教室側でしてあげられること、生徒自身がしなくてはならないことを提案してあげましょう。
「こうしなさい」というよりは「このように一緒に頑張っていこう」と言ってあげましょう。
また、テストで失敗してしまった際には、塾としての指導不足や対策不足も考えられるので、生徒の悪いところだけではなく、塾の失敗としても真摯に受け止めるようにしましょう。
テストの結果は生徒だけのものではなく、塾としての成果でもあることをお忘れなく。
私は学校の定期テストが行われる前から、危ないものは危ない、期待できそうにはないときもそのように伝えるようにしています。
期待していたのに思ったように成果が出なかったときは必ず「期待に沿えずすいません」と謝罪するようにしています。
10.教室拡大は人が先か箱が先か
先生の人数も多くなり、授業の数も増えてくると、いよいよ事業規模の拡大を考えます。
教室自体を大きくするか、別の場所に2教室目を出すか。
最初に規模を拡大する理由は、やはり「現状のままでは満足に授業が提供できない」からだと思います。
集団授業であれば「教室のキャパを越えた人数の生徒から応募がくるようになった」
個別授業であれば「授業を行うための部屋数が足りなくなった」
などが最たる理由として考えられます。
場所を移転するのであれば、これまで通ってくれていた生徒に迷惑がかかります。
塾を選ぶ際には家からの距離も重要なファクターですので、移転を機に辞めてしまう生徒がいる可能性があることは心得ておきましょう。
また、教室を建て替える場合は、工事の間はどのように授業の対応するかを考えなくてはなりません。
「建て替えるから数か月間休講」はあまりにも身勝手ですよ。お預かりしている生徒の中に受験生がいれば数か月の休講は命取りです。
さて、これらの問題をクリアし、規模の拡大が決まった際の悩みを見ていきます。
(ⅰ)講師の人数を先に確保する場合の問題
事業拡大に向けて先に人員を確保した場合の問題点を考えます。
現在の教室では物理的な問題があって規模を拡大することがほとんどですので、先に先生の人数を多く確保しても「授業数が足りない」という事態に陥ります。
「採用されたものの仕事ができない」ではせっかくご縁があった先生たちも辞めてしまいます。
事業拡大に向けた採用活動の際には、仕事が開始できるようになるまでにはしばらく時間がかかるかもしれない旨を新しい先生方に理解してもらうようにしましょう。
(ⅱ)場所を先に確保する場合の問題
事業拡大に向けて先に場所を確保する場合の問題点を考えます。
拡大直後はこれまでの教室で行っていた授業をそのまま新しい環境で行うことになります。
部屋の大きさや部屋数を持て余すことが考えられます。
しかし、大きくなった分、家賃はこれまで以上の負担となってのしかかってきます。
ここで問題なのが、規模を拡大したからと言って、必ず売り上げが上がるわけではないのです。
規模を拡大した場合、新たな環境に見合う仕事ができるようになるまでは、金銭的負担が大きくなることは覚悟しておきましょう。
私の教室拡大の際は、意図せぬタイミングで大家の都合で立ち退きを命じられました。
もともとの教室から数百メートルの場所に新しい教室を構えられたので良かったのですが…。
何の手当や保証もなく、不動産会社とグルになって、そりゃあもうひどいもんでした。
法律に疎かったのも、「10年の付き合いだから」と大家を信じたのも自分の責任です。
(ⅲ)【答え】人が先か箱が先かで悩んだら
上記(ⅰ)(ⅱ)の問題で悩むのであれば答えは『箱が先』です。
先生を先に採用するのであれば採用した先生方に迷惑をかけてしまします。
場所を先に確保して苦しむのはご自身です。余裕資金を確保したうえで先に場所を確保して、先生方が働きやすい環境を整えてあげることも塾長の仕事なのです。
11.まとめ
学習塾の経営を始めることは、他の業種と比べてそれほど難しくないと言えます。
最初に書いた通り、やはり「続けること」が難しいのです。
学習塾を長く続けて成功させるためには、成果を出して認められていくことが必要です。
そのためには、経営者(塾長)自身が塾や生徒のことを常に考え、努力をしていかなくてはなりません。
しかし、それはどの業種でも同じことが言えます。経営者は努力家であるべきなのです。
新型コロナウイルス感染症が流行し、日本の塾教育はさらに多様性を求められています。
生徒の数が減っている反面、塾教育はこれまで以上に必要とされていくでしょう。
自身で教育に対する考えを持っている人は、それを実現するためにぜひ学習塾の経営にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。